高次脳機能障害

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高次脳機能障害への私の取組み

私の取組み

高次脳機能障害という言葉が交通事故の賠償や労災補償の分野で使われ始めたのは平成12年ごろです。

この年の年末、自賠責保険では「高次脳機能障害認定システム」を定め、脳外傷による高次脳機能障害という新たな後遺障害概念を明らかにし、翌年から認定作業が始まりました。厚生労働省の「高次脳機能障害支援モデル事業」も始まりました。当時私は、福岡県弁護士会の事務局長として弁護士会活動に携わっていました。

そのころ、現在のNPO法人「福岡・翼の会」の前身の団体が設立され、弁護士会に協力の要請があったのです。これが私と高次脳機能障害との出会いでした。「こんな後遺症に苦しんでいる人がいるんだ」という驚きと、「これまで自分も見過ごしていたのではないだろうか」という不安は今も覚えています。

それから10年あまり、脳外傷による高次脳機能障害は私が最も力を入れてきた分野です。
これまで多くの後遺障害認定や損害賠償事案に携わり、現在も、まだ治療中の事案から裁判中の事案まで約20件の高次脳機能障害事案(いずれも交通事故)に取組んでいます。賠償問題だけでなく(賠償を得てもその先には日々の困難な生活が待っています)、高次脳機能障害者を支援するNPO法人「福岡・翼の会」の理事を務め、同趣旨の団体である「ぷらむ熊本」の活動に参加するほか、日本高次脳機能障害学会にも所属しています。福岡県弁護士会では「高次脳機能障害研究会」を主宰しています。

私の取組み

これまで被害者の主治医をはじめ、多くの医師や臨床心理士、リハビリスタッフ(作業療法士、言語聴覚士など)といった専門家や、高次脳機能障害支援コーディネーター等の行政の担当者などの協力をいただいたり連携したりしながら、被害者への正当な補償の実現と生活設計のお手伝いに努めてきました。

もちろん、そのためには自分自身が高次脳機能障害を理解していなければなりません。多くの専門家や、何より当事者やご家族から教えていただき、自分なりに勉強して、やっと自信をもって高次脳機能障害の事案に取組めるようになりました。事務所の書棚の「高次脳機能障害コーナー」は100冊近くになりました。自他ともに認める「高次脳オタク」です。

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高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは

私たちの脳には、感覚器官からの情報をもとに音や手触りなどを感じる知覚機能、骨や筋肉などの運動器官によって体の各部を動かす運動機能、記憶・認知・感情・言語などを支配する高次脳機能という三つの機能があります。

広い意味での高次脳機能には脳全般が関与していますが、中心的な役割を担っているのが前頭葉です。ヒトの脳の大きな特徴は発達した前頭葉であり、複雑な高次脳機能はヒトならではのものです。

このような高次脳機能が損傷を受けるのが高次脳機能障害です。原因は、脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞などの脳血管障害)、脳外傷(交通事故やスポーツ事故、労災などの事故による脳挫傷、びまん性軸索損傷、急性硬膜外/下血腫など)、脳炎(ヘルペス脳炎・ウイルス性脳炎など)、低酸素脳症(心筋梗塞後、溺水など)などさまざまです。最も多いのが交通事故などの脳外傷によるものだといわれており、とくに若い男性ではバイク事故、子どもでは自転車事故が目立ちます。

ヒトの高次脳機能の複雑さに比例して、高次脳機能障害の症状も複雑です。橋本圭司医師の「高次脳機能障害」(PHP新書)には次のように整理されています。

高次脳機能障害とは
  • (1)易疲労性(疲れやすい)
  • (2)注意障害(注意の集中、持続、選択が苦手)
  • (3)半側空間無視(損傷部位と反対側の刺激に反応しない)
  • (4)失語(人の話の理解や自分の考えの表現が困難)
  • (5)記憶障害(新しいことを覚えられないなど)
  • (6)失行(ある動作の意味はわかるができない)
  • (7)脱抑制(感情のコントロールができないなど)
  • (8)意欲・発動性の低下(やる気が出ないなど)
  • (9)判断力の低下(二つのことを天秤にかけて選べないなど)
  • (10)遂行機能障害(物事を計画して実行できない)

私が担当した数十例を見ても、一人ひとり症状の内容と程度はさまざまです。(2)(5)(10)は大部分のケースで見られました。(1)(8)がある人は、事情を知らない人から「いい若い者がごろごろして」などと思われるでしょう。(7)もしばしば見られます。キレやすい、イライラしやすい、欲しい物を我慢できない(浪費)など。暴力、性的逸脱行動、自傷行為が伴うケースはとくに深刻です。(2)(9)が重いと仕事どころか自分の身の安全も守れません。

高次脳機能障害とは

このように、高次脳機能障害は重大な障害なのですが、麻痺や言語障害が目立たないケースでは、一見障害があるとはわからないことも多いのです。しばしば本人にも自覚がありません。そのようなことも高次脳機能障害が「見えない障害」といわれ福祉や医療の谷間に落ち込んでいた理由であり、交通事故被害の賠償においても救済されてこなかった理由なのです。

ところで、ここで「障害」という言葉を使うことについてお断りしておきます。
「障碍」という言葉が使われることがありますね。「碍(礙)」とは「さまたげる」という意味で、大きな岩を前に人が困っている様子を示しているそうです。「障がい」の「がい」は本来こちらのはずです(融通無碍の「碍」です)。challengedの訳としても適切ですし、「ある心身の特徴と社会のあり方との相互作用によって個人の不利益が生じる」という「障害」の「社会モデル」を採用した障「害」者権利条約にも忠実です。「碍」が当用漢字になかったからといって、さして疑問も持たずに「害」の字を当ててきた私たちの感覚も問われるべきであると思います。ただしこのホームページでは、「後遺障害」という表記が用いられていることと、ホームページの趣旨を考えて、心ならずも「障害」に統一しています。

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高次脳機能障害と後遺障害認定

高次脳機能障害と後遺障害認定

自賠責保険の後遺障害認定システムにおいては、高次脳機能障害は原則として1~9級の評価を受けます。

交通事故事案において、自賠責の後遺障害認定でどのような評価(等級認定)を受けるかは、その後の賠償を決定づける大きなポイントです。示談交渉はもちろん裁判においても、自賠責の等級認定はきわめて大きな影響を持っています。自賠責の等級認定を裁判で覆すことは容易ではありません。

ところが、私にとっては信じがたいことに、診断書の作成など後遺障害認定のプロセスを医師と加害者側の保険会社に任せてしまい、「等級が決まったら相談に来てください」などと答える弁護士がきわめて多いのです。
医師の多くは損害賠償における診断書の比重の大きさを理解していませんし(医師の仕事は患者を治すことですから無理のないことです)、保険会社はいわば「敵」で、被害者の等級認定のために尽力してくれるわけではありません(重い後遺障害が認定されれば支払額が増えます)。被害者側の弁護士こそが、以後のプロセスを大きく左右する後遺障害の認定手続きに積極的にかかわるべきなのです。私は、ここは「主戦場」だと思っています。

私が自賠責保険の被害者請求をするのも同じ理由で、後遺障害認定手続を被害者側に引き寄せるためです。

高次脳機能障害と後遺障害認定

後遺障害認定手続きは原則として書面審査ですから、その結論は後遺障害診断書などの内容が決定します。重要な所見でも診断書に記載されていなければ評価されません。「診断書は医師まかせ」は禁物なのです。

私は、診断書や意見書の作成などについて相談するために、高次脳機能障害事案ではほぼ常に主治医などの専門家との面談をしています(先方はご迷惑かもしれませんが)。
後遺障害認定の判断材料となる「日常生活状況報告書」もご家族から詳しく聞き取りをし、質問を重ねて作成します。重要なエピソードは漏らさず記載しなければなりません。学校関係者とも面談します(学校に書いてもらう書類もあります)。必要に応じて、写真、通知表(成績表)、カルテ、看護日誌などの資料も添付します。職場の同僚から事故の前後での変化について聞き取り、陳述書を作ることもあります。繰り返しますが後遺障害認定は書面審査であり、症状にふさわしい後遺障害等級を認めさせるためには、十分な準備が必要なのです。

後遺障害等級認定の異議申立にも医師などの協力は不可欠です。

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高次脳機能障害と裁判

高次脳機能障害と裁判

しばしば裁判で争われるのは、

  • (1)被害者に脳外傷による高次脳機能障害が生じているか(他の原因によるものや非器質的なものではないか)、
  • (2)高次脳機能障害の程度(労働能力はどのくらい失われたのか、将来介護は必要か、必要な場合の介護の内容と費用は)

などです。
とくにしばしば争われるのは(2)です。

たとえば、学生・生徒の場合、被告側(保険会社)は、「学校に通えているから社会適応もできる。したがって高次脳機能障害が2級(または3級)でも少しは働けるはずだ」などという主張をします。しかし、学校に通っているからといって働けることにはなりません。学校と違い、仕事は対価をもらえるだけの労働をコンスタントに提供できなければなりません。学校のように、少々のことは大目に見てくれ、友達や先生が助けてくれる保護的な環境とは違うのです。仕事内容が本人の興味や能力にマッチし、同僚も上司も高次脳機能障害を理解してくれる理想的な環境であれば、あるいは就業できるかもしれませんが、そんな環境は現実にはほとんどありません。福祉的就労は可能かもしれませんが、その対価はせいぜい小遣い程度にすぎません。もちろん希望は持てるし持つべきですが、将来の生活不安を少しでも軽くするためには正当な補償を確保することも必要です。

高次脳機能障害と裁判

介護費用についても、高次脳機能障害についての理解がなければきちんと認めさせることは困難です。
自賠責の後遺障害等級では、高次脳機能障害で介護が必要なのは1級と2級だけで、3級は(労働能力はすべて失っているが)介護は不要とされています。しかし、3級以下で日常生活動作(ADL)が自立している場合でも、それ以外の面で介護が必要な場合はしばしばあります。

そのような場合、裁判所は自賠責の後遺障害認定に拘束されないので、「後遺障害等級は5級が相当だが、見守りが必要なので日額2,500円を認める」などと介護費用を認めることができるのです。むしろ私の経験では、3級ではほぼすべての事案で介護費用を認めさせています。5級以下でも認められることがあります。考えてみれば当然で、労働能力がゼロではないからといって日常生活や社会生活に他人の援助が不要であるとは限りません。実情を的確に訴え、生活動作の介助だけでなく、外出時の危険やトラブルを防ぐための付添い、金銭管理、日常生活における見守りや声掛けなど、症状に応じてさまざまな面での介護(看視的介護)の必要性を立証すべきです。介護=生活動作の介助ではないのです。

また、裁判では必ずと言っていいほど、後遺障害の有無や程度について保険会社の顧問医などの意見書が提出されます。これに対して適切に反論できなければ、裁判官が「専門家のいうことだから」と引きずられてしまいます。そのような意見書は、初めから後遺障害の程度は原告側が主張するより軽いことを立証することを目的としているうえ、患者を診察せずに書かれています。そのためそれらは、一般論に依拠しがちであるとともに、カルテや検査結果の引用や評価が「つまみ食い」になりがちです。弁護士自身が高次脳機能障害を理解し、カルテや関係資料をきちんと読んで医師との面談などによって必要な準備をすれば、反論できるのです。

そのほかにも、症状固定までの介護費用や介護のための休業損害の問題、近親者慰謝料の問題、介護用品や自宅改装費などの積極損害の問題、器質性の高次脳機能障害であることの立証に困難がある場合の非器質性精神障害の主張立証の問題など、多くの問題がありますが、省略します。

ただ、ほとんどの場合、示談交渉で解決するよりも裁判を選択したほうが賠償額は多くなることは、ぜひ知っておいていただきたいと思います。一例をあげると、示談交渉の最終段階での提示額が約7,000万円(当初は約5,500万円)であった後遺障害2級の事案で、訴訟を提起し(後遺障害等級はそのままで)約1億2,000万円で解決しています。これはごく普通の例です。

私はこんな弁護士です。弁護士 小野 裕樹
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脳の外傷が原因で起こる高次脳機能障害について私が力を入れるようになったきっかけや、どのような症状が現れるのか、障害認定における問題点、裁判の争点などを解説いたします。

取扱い事例
取扱い事例

私が実際に扱った、高次脳機能障害の事例を紹介いたします。事例ごとに被害の状況や事故の状態は異なり解決方法も違いますが、どのような事案があるのか、参考にご覧ください。

福岡交通事故弁護団

福岡交通事故相談室は私(弁護士小野裕樹)が代表を務める福岡交通事故弁護団と連携してます。福岡交通事故弁護団は、交通事故事件を専門に取扱っている、実務経験も豊富な交通事故相談の弁護士のチームです。情熱をもって、事故・事件に対応しております。私たちがどのような理念を持ち、交通事故事件と向き合っているのか、またどのような弁護士で構成されているのかをご紹介いたします。メンバー一人ひとりの詳細なプロフィールも掲載しておりますので、ご相談の前にぜひご覧ください。

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費用について
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