福岡・翼の会

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NPO法人 福岡・翼の会 HPより
「翼の会」と「翼」の紹介記事です。

高次脳機能障がい者と家族を支援する
NPO法人福岡・翼の会と
地域活動支援センター「翼」のご紹介

NPO法人福岡・翼の会
理事長 小野 裕樹(弁護士)

1)「福岡・翼の会」の歴史と特徴

私たちは、高次脳機能障がい者に対する社会的な認知も行政の支援もなかった平成12年から、高次脳機能障がい者とその家族を支援する活動を続けてきました。平成18年には、福岡市をはじめとする多くの支援者のお力により、私たちの念願であった、九州で初めての高次脳機能障がい者のための作業所として、福岡市小規模作業所「翼」が誕生しました。その後、運営主体の解散により、「翼」を存続させるために作ったのが、NPO法人福岡・翼の会です。それにともない、「翼」は地域活動支援センターとなりました。

福岡・翼の会は、福岡県の高次脳機能障がい者の支援に長年携わってきた実績に加え、専門性を特徴としています。高次脳機能障がい者の支援には、医療、リハビリ、福祉、法律などさまざまな専門分野が関わり、各分野の専門家の参加が必要ですが、当NPOは、高次脳機能障がい者の事案を数多く担当してきた弁護士が理事長をつとめ、精神科医、臨床心理士、言語聴覚士など、高次脳機能障がい者の治療・リハビリに豊富な経験を持つ専門家が理事として参加して、それぞれの専門的知見を活動に生かしています。

2)地域活動支援センター「翼」の活動内容

「福岡・翼の会」が運営する地域活動支援センター(Ⅱ型)である「翼」は、福岡市心身障がい福祉センター(あいあいセンター)の隣のビルにあります。

「翼」では、高次脳機能障がい者の社会参加を支援するために、受託作業のほか、グループワーク、リハビリ教室、音楽療法、ヨガ、ストレッチ、パソコン教室など、利用者のニーズに合わせたさまざまなメニューを用意しています。講師は、言語聴覚士、専門作業療法士、音楽療法士、ボディトレーナー等の専門家であり、他のスタッフも社会福祉士、社会福祉主事、ホームヘルパー等の有資格者です。このほか、施設見学やお花見などの外出活動や、ゲーム大会、スポーツ大会などの外部のイベントへの参加も行っています。

和やかな雰囲気の中で、当事者がそれぞれの特性や興味に応じた活動に参加し、自分らしい生き方や社会への参加を実現していく、そんな場所が「翼」です。

3)「福岡・翼の会」の家族会活動

福岡・翼の会は、「翼」を運営するとともに、当事者や家族を支援する家族会活動を行っています。年に数回開かれる家族交流会では、高次脳機能障がい者の支援に豊富な経験を持つ専門家を交え、いくつかのグループに分かれて情報交換や交流を行っています。バスハイクや楽しいプログラムが満載のクリスマス会など、当事者が参加するイベントも用意しています。家族会活動には、高次脳機能障がいを抱えたお子様のご家族も参加しています。

このような活動のほか、「福岡・翼の会」では、ご家族からの個別の相談にも随時応じています。

4)お問い合わせをお待ちしています!

私たちはこのような活動をしています。「翼」の利用はもちろん、高次脳機能障がい者と家族の支援について、ご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。見学も大歓迎です。

「翼の会」理事長のコラム
「翼の会」のホームページに私が連載している記事です。

★ 理事長コラム 第1回 「高次脳機能障がいは「見えない障がい」か」

理事長として毎月当事者や家族の役に立つ記事を載せてほしい! という施設長はじめ職員さんたちからの熱い要望にお応えして(すみません。少し盛ってます。)、(さぼらない限り)月に1回程、高次脳機能障がいに関わる法律問題などについて書かせていただきます。理事長としては新米ですが、弁護士としては35年目となり、人間としては高齢者の仲間入りが秒読みとなりましたから、ムダに身につけたものを含めてそれなりの知識と経験はあるはずです(あってほしい)。
そんなこといっても、どうせ法律問題のコラムなんて面白くないんでしょ、と思っておられませんか。実はそのとおりです。といってしまえば身もふたもありませんが、楽しい話でなくても、ときどき役立つ情報もあると思いますから、どうぞお付き合いください。

第1回は、この障がいについて私が感じてきたことをお話しします。

私は、平成12年、翼の会の前身「ぷらむ」設立時からお付き合いをさせていただき、20数年となりました。当時は「高次脳機能障害」なんて聞いたこともなかったのですが、それは当たり前。そのころ、行政が新しく作った用語だったからです。
もちろん、失語症などの局所性の脳損傷による症状については古くから知られていました。しかし、そのころ始まった国の「高次脳機能障害支援モデル事業」で使われるようになった「高次脳機能障害」という言葉は、それよりはるかに広いものを指していたのです。当時私は、精神科医の弟に「高次脳機能障害ってどんな病気?」と聞いたのですが、「そんな言葉は使わないし大学でも教えないよ。」という答えでした。確かに、医学書や医学辞典を開いても載っていないのです。これが(当時よく言われていた)「見えない障害」ということか、と納得しました。

認知されていなかったから、患者は医療や福祉、労災や交通事故被害の補償の谷間に置かれていたのです。それを何とかしようと全国に作られたのが高次脳機能障がいの家族会でした。

大けがをして意識障害が続いたけれど、幸い回復して退院できた。麻痺は少し残っているものの学校や仕事に戻れないほどではなさそうだ、と家族が胸をなでおろしたのもつかの間、日常生活や社会生活を再開する中で問題が次々に明らかになります。お見舞いに来てくれた人は、思ったより元気そうな様子を見て「良かったね。元気になったね。」と言ってくれますが、本人や家族は大変なのです。外観ではわかりにくい、ちょっと話したくらいではわからない、まさに「見えない障がい」です。

高次脳機能障がいが「見えない障がい」であることはそのとおりなのですが、長年、交通事故による高次脳機能障がい被害者の損害賠償や保険金請求に携わるうちに、少し違う感想をもつようになりました。家族に「見える」のはもちろんですが、私たちでも「見ようと思えば見える」のです。「見えない障がい」というより「見ようとしなければ見えない障がい」といったほうがいいでしょう。

弁護士として、ご本人と話をしていても、多くの場合、確かに障がいは「見えにくい」といえます。失語症が重くなければ会話はスムーズなことが多いし、マヒも目立たないことが少なくありません。「家や学校(職場)で困っていることはないですか」と聞かれて「大丈夫です」とか「別にありません」といった答えが返ってくることもあります。それでも、丁寧に、具体的に聞いてみると、困っていることが多いことがわかります。もちろん、ご本人に病識がないこともありますし、どう説明してよいかわからないこともあるでしょう。そこで大切なのはご家族からの情報です。ご家族はいつも近くでご本人を見ているし、医師も私たちも知らない事故や発病前の様子も知っています。

交通事故の補償を例にとると、後遺症の評価(等級)を受けるために必要な書類のなかに「日常生活状況報告」というものがあります。A3用紙1枚のもので、ご家族が本人の状態を5段階で評価するものです。私は、この書類を作るときには、詳しい聞き取りをして具体的なエピソードなどを記載した「別紙」を10枚以上付けています。もちろん主治医やリハビリスタッフにもお話を聞きます。そうすると、よく見えなかったご本人の障がいの特性や生活の困難などがだんだん見えてくるのです。それを、後遺症の評価を行う自賠責保険や裁判所に伝え、説得することが弁護士の大切な仕事の一つです。

このように、ご本人の特性について理解を深め、注意して接すれば、それまで見えなかった高次脳機能障がいが私たちにも「見えてくる」のです。そうしてはじめて、裁判所にも正しい判断をしてもらえます。裁判所はなんでも「証拠」ですから、「高次脳機能障がいは「見えない障がい」なのだから、証拠が不十分でも後遺症が重いことを認めてください」と求めてもそれは無理です。なんとかして「見える」ようにしなければならないのです。

次回は、「高次脳機能障がいと後遺障害等級認定」についてお話しします。

★ 理事長コラム 第2回 「高次脳機能障がいと後遺障害等級認定」

高次脳機能障がいを発症する原因はさまざまですが、交通事故や労災事故も少なくありません。子どもや若い人では歩行中や自転車・バイク事故などの交通事故が多く、働いている人は、仕事中・通勤中の事故(転落、交通事故など)や長時間労働による疲労の蓄積が原因となる脳血管障害(脳出血やくも膜下出血等)によって発症することもあります。

このような原因で高次脳機能障がいになった人については、自動車保険や労災保険などによる補償があり、さらに、第三者(加害者など)に損害賠償を請求できることもあります。自動車保険や労災による補償額を決める要素になるのが「後遺障害等級」です。自賠責保険の後遺障害等級と労災のそれとはほとんど同じです。障害者手帳や障害年金でも〇級という等級が付きますが、これらとはまったく別ものです。

高次脳機能障がいは、脳損傷による身体性機能障害(麻痺)とあわせて、脳の障害として後遺障害等級が認定されます。認定するのは、自賠責保険の等級は自賠責保険会社(実際の認定は第三者機関が行います。)、労災の場合は労働基準監督署(労基署)です。自賠責保険では、障がいによって労働能力をどのくらい失ったか、介護が必要か、という点から、1、2、3、5、7、9級等が認定されます。

高次脳機能障がいについての自賠責保険の評価はこんなイメージです。これに麻痺が加わると、より重い等級が認定されることがあります。

1級
身体機能は残存しているが高度の認知症があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
2級
著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、一人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声かけや看視を欠かすことができないもの
3級
自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声かけや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
5級
単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができないもの
7級
一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級
一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの

どうでしょう。わかるようなわからないような… 詳しく知りたい方は私に相談してください。

次回は、「高次脳機能障がいと成年後見制度 」についてお話しします。

★ 理事長コラム 第3回 「高次脳機能障がいと成年後見制度」

成年後見制度とは

ある人(成人)の財産を管理したり処分したりできるのは、本来その人だけです。家族であっても、本人の財産を勝手に処分することはできません。

しかし、財産を管理する能力が不十分な人にその(自分の)財産の管理を委ねてしまうと、度を越した無駄遣いをしたり、他人に騙されたり、通帳などをなくしてしまったりして、財産が失われてしまい、生活が立ち行かなくなるかもしれません。そのような場合に、本人の判断力を補い、その財産を守るための制度が成年後見(せいねんこうけん)制度です。

成年後見までは必要ない場合には、保佐(ほさ)や補助(ほじょ)という制度も用意されています。

成年後見は、本人の財産管理や処分を、家庭裁判所で選ばれた成年後見人が本人に代わって行うものです。成年後見人が付いた本人を被後見人(ひこうけんにん)といいます。後見人は、本人の代理人として、財産管理と身上監護(しんじょうかんご)を行います。身上監護とは、たとえば介護サービスの契約や入院手続をすることを指します。

成年後見は、年間約3万件申し立てられています。その原因の6割以上は認知症ですが、高次脳機能障害を理由とするものも数パーセントあります。

親族は成年後見人になれないか

成年後見制度の利用を考えるとき、デメリットと感じされるのが、家族が後見人になれないことがあること、その場合は専門職後見人の報酬が発生すること、裁判所への報告の手間などです。

後見人を決めるのは裁判所です。家族が後見人になりたくても、選ばれるとは限りません。家族以外の後見人の多くは、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職です。

かつては、親族が後見人に選ばれるのは2割程度だったのですが、いまでは4分の3は親族後見人となっています。家族関係や財産状況が複雑でなければ、希望した候補者が成年後見人に就任できる場合が多いといえます。財産が多い場合でも、専門職の後見監督人(こうけんかんとくにん)が選ばれたり、後見制度支援信託(こうけんせいどしえんしんたく)や後見制度支援預金(こうけんせいどしえんよきん)を利用することによって、親族が後見人となることが増えています。

どんな場合に利用を考えるか

成年後見を申し立てる動機で最も多いのは預金の管理や解約です。ついで身上保護(入居契約、入院契約など)です。以下、介護保険契約、不動産の処分(施設入居のために自宅を売る場合など)、相続手続き、保険金受取り、訴訟手続き等となっています。最近は、施設の入居契約は成年後見人と結ぶという施設が増えており、施設入所のために成年後見を申し立てるケースもあります。

成年後見等の制度は、いったん始まると本人や家族が希望したからといって終わりにはなりません。「こんなはずじゃなかった」ということにならないように、必要性と利用することによって生じる制約を考えて決めましょう。迷ったら「翼の会」に相談してください。

次回は、「高次脳機能障がい者と損害賠償」についてお話しします

私はこんな弁護士です。弁護士 小野 裕樹
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高次脳機能障害
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高次脳機能障害

脳の外傷が原因で起こる高次脳機能障害について私が力を入れるようになったきっかけや、どのような症状が現れるのか、障害認定における問題点、裁判の争点などを解説いたします。

取扱い事例
取扱い事例

私が実際に扱った、高次脳機能障害の事例を紹介いたします。事例ごとに被害の状況や事故の状態は異なり解決方法も違いますが、どのような事案があるのか、参考にご覧ください。

福岡・翼の会

福岡・翼の会(http://www.f-tsubasa.org/)は,私が理事長を務める、高次脳機能障がいを抱えた当事者とその家族を支援するNPO法人です。福岡市の天神で,高次脳機能障がい者を対象とした地域活動支援センター「翼」を運営し,家族交流会・相談会・バスハイク等のイベントなど,さまざまな家族会活動をしています。

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事故の慰謝料について
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入通院、死亡・後遺症、精神的苦痛に対しては慰謝料の請求ができます。
交通事故の慰謝料について、どのような場合にどのくらいの金額が認められるかを「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」のそれぞれに関して、慰謝料が通常より増額される場合などについて、わかりやすく丁寧にご説明いたします。

費用について
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弁護士費用は、保険会社の示談提示がある場合や訴訟になった場合などで異なってきます。福岡交通事故相談室における弁護士費用に関して、ケースごとに詳細に掲載しております。
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