慰謝料の「基準」

慰謝料には、傷害慰謝料(入通院慰謝料)、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料などがあります。

慰謝料の額については「赤い本」や「青本」に基準表なるものが載っており、裁判所もこれにもとづいて認定しています(いわゆる裁判所基準)。自賠責保険の支払基準や任意保険会社の支払基準はこれよりかなり低額です。

弁護士もこの基準をもとに請求を行いますが、あくまで「目安」であることに注意が必要です。一応の目安に過ぎないにもかかわらず、具体的な状況を踏まえることなく「赤い本」「青本」の基準額しか請求していない場合も多く、「この怪我やこの後遺症でこの慰謝料額は低すぎるのでは?」と疑問を持つことがあります。被害者側の代理人(弁護士)が、「慰謝料は赤い本の基準額で請求する」と機械的に処理しているのではないかと考えられます。

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傷害慰謝料

赤い本や青本には基準表が載っており、裁判所も基本的にはこれによっています。

ただし、赤い本や青本でも、事情によっては基準額を増額できることがちゃんと書かれているのです。

たとえば赤い本は傷害慰謝料について次のように記載しています。

「被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事などの都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には、上記金額を増額することがある。」「傷害の部位、程度によっては、別表Iの金額を20~30%程度増額する。」「生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術など極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。」

青本も「症状が特に重い場合については、上限の2割程度の金額まで加算を考慮する」としています。
このほかにも、ひき逃げ、加害者からの暴言、入院による留年など、増額事由となりうる事情はほかにもあります(交通事故重要裁判例6(平成24)を参照)。弁護士は、一人ひとりの被害者の苦しみを、丁寧な聞き取りと客観的な証拠(看護日誌など)にもとづいて理解しようと努めることが必要です。

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後遺症慰謝料

後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)についても、慰謝料の基準表はあくまで目安です。

たとえば14級に至らない後遺症の場合でも、症状に応じた慰謝料が認められることがあります。青本では「自賠責後遺障害等級表に該当しない程度の障害でもその部位程度により認められることは当然である」としています。

ある等級に該当する場合でも、相当額の増額が認められることもあります。慰謝料は精神的苦痛に対して認められるのですから、当然といえば当然です。

重度の後遺症の場合は、被害者本人だけでなく親族にも固有の慰謝料が認められることがあります。

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死亡慰謝料

死亡慰謝料は、一家の支柱であるかどうかなどによって基準が形成されています。生計維持的要素が加味されているといえます。

現在の判例では、死亡慰謝料は遺族(相続人)固有の権利ではなく、被害者の慰謝料請求権が当然に(被害者の請求の意思表示なしに)相続されるという理屈が採られています。

別途遺族固有の慰謝料が認められることもありますが、その額(死亡被害者=被相続人の慰謝料との配分)は裁判例によりまちまちです。裁判所は死亡慰謝料の金額について、死亡被害者の慰謝料と遺族の固有慰謝料とをトータルで考えているようです。赤い本では、一家の支柱について2,800万円としていますが、遺族固有の慰謝料を含めて3,000万円を超える裁判例はごく普通に見られます。
高齢者については低めの慰謝料額が認定される傾向があります。
なお、固有の慰謝料は内縁配偶者にも認められます。

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交通事故事件を中心に、高次脳機能障害にも精通している、弁護士歴26年のベテラン。さまざまな形で事故被害者の支援活動を行っている。

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